趣味2018年03月31日
#79) 桜花と望月

 平成30年3月30日 23時。今夜もよく晴れて、ほぼ満月が ほぼ南中している。国立天文台の「今日のほしぞら」によると、湖南市あたりの正確な南中時刻は 23:23 らしいが、殆ど天頂にあるかのようにまぶしく照り、桜花を宵闇に浮かび上がらせている。今夜は陰暦二月十四日、明日が十五夜で望月。

 

 「如月の望月」といえば、西行法師の歌が思い出される。

 

   ねかはくは 花の下にて 春しなん そのきさらきの もちつきのころ

西行法師は最晩年には南河内・河南町の弘川寺に庵居し、この歌を残して陰暦二月十六日、釈尊涅槃の日に入寂したという(ウィキペディアより)。季節はまさに今、陰暦「如月の望月」の頃だ。そうだったのか、如月十六日は釈尊涅槃の日だったのか。知らなかった、西行法師の想いを。

 

 実は、わが岳父は平成に入ってまもなく、まさに今この時季に命を絶った。いろいろの心労が重なった上に自責の念が強かったのだろう。その岳父の生まれ育ったのが河南町。義父が死を選んだのは西行法師の歌を念頭に置いていたのかな…と、今夜はじめて思い当たった。岳父は歌詠みを趣味にする、こころ優しい、風雅なひとであった。

 私はそんな義父の心を察するにはほど遠かった。若かった、未熟者だった、ということだ。今なお未熟ではあるけれど、少しは当時の岳父の心を推し量ることに近づけたのかもしれない。

 闇に白く浮かぶ桜花を愛でながら、岳父のことを想った。すぐ傍に来て居られたのかもしれない。先日のお彼岸には墓参しなかったが、あさって日曜日には妻と伴に墓参するつもりだ。大阪・南河内の太子町、叡福寺(上ノ太子と呼ばれ、聖徳太子と母と妻が合葬されている太子廟がある)の墓苑に眠っている。

 この墓苑は特別な場所だと思う。大阪・河内の側から二上山(ふたかみやま)を間近に仰ぎ見ることのできる絶好の場所にある。ふたかみやまは大津皇子の墓所として我が敬愛する聖なる御山だ。皇子の同母姉・大来皇女の嘆き…

 

うつそみの人なる我や あすよりは ふたかみやまを いろせとあが見む