診療(診察・治療)2017年12月17日
#59) 低血糖の話:その2

 「なぜ低血糖が起こるのか?」などの詳細は、ネット上の「糖尿病ネットワーク」というサイトの「糖尿病セミナー」に分かりやすく書かれています。

 

 私自身は糖尿病と診断された時点で自前のインスリンがほぼゼロだったので、いきなりインスリン注射から始まりました。糖尿病用の内服薬としてはメトホルミンを使った経験があるだけで、それ以外の内服薬は―最近になるまで―使ったことがありませんでした。

 

 よく使われるスルホニル尿素系(SU剤:アマリール®、グリミクロン®、オイグルコン®など)というのは、インスリンの分泌を刺激する薬です。糖尿病患者のうち、膵臓からインスリンを分泌する能力は残っているけれども、分泌タイミングが遅れたり、分泌量が少なかったりの場合にはSU剤がよく使われます。

 注意すべきなのは、服用したあと食事の糖質量が少なかったり、食事する時間が遅れたりした場合はインスリンが相対的に過剰となり低血糖を起こしてしまうことです。

 

 以前に、「デイサービスの男性利用者が意識を失って倒れたので診てほしい」と請われたことがありました。駆けつけて名前を呼んでも反応無く、いびきをかいています。赤ら顔で、血圧が190くらいあったと記憶します。普段の病名など情報は皆無。脳卒中に違いないと診て近くの病院へ救急搬送したところ、低血糖だと判明。直ちにブドウ糖を点滴して回復されました。あとから分かったのは、「SU剤を飲んだが食事を摂っていなかった」という事実。

 #58)で書いたように、低血糖のときは交感神経が興奮しますので、高血圧や頻脈が起こっても何ら不思議ではありません。みごとな誤診を致しました。

 

 ボグリボース(ベイスン®)、アカルボース(グルコバイ®)などを単独で飲んでいる場合は低血糖を起こすことはありません。しかし、SU剤やインスリンと併用すると低血糖を起こすことがあります。この場合、砂糖を飲んでもダメで、ブドウ糖を飲ませる必要があります。ブドウ糖が無い場合は、「ブドウ糖果糖液糖」を含有する甘い飲料を飲ませるとよろしい。最近の甘い飲料は殆どが砂糖よりも安価な混合「液糖」を使っていますから、ブドウ糖の補給ができるのです。間違ってもカロリーオフ飲料(ブドウ糖が ゼロ~わずか)は飲ませないように!

 

更に 低血糖の話 つづく