診療(診察・治療)2017年11月24日
#57) ひどい のど痛、再発!

 今年は9月に入って直ぐに ひどい咽(のど)痛で声が出なくなり、半日だけ休診しました(第46話)。同様の症状が11/22未明から再発し、つばを飲み込むのが怖くなるほどでした。

 発症の前々日あたりから咽と後鼻腔(鼻の奥)の境目あたりが少し腫れているのを感じたので、サワシリン(一般名 アモキシシリン)というペニシリン系の抗生剤を2g/日 飲み始めました。しかし、あまり効果は無く咽の腫れと痛みはどんどん強まりました。しかも黄色い痰が非常に粘っこく、ゴホゴホ咳をしてもなかなか出せません。オエッと吐く寸前まで咳き込んでようやく排泄できるような辛さです。

 サワシリンが効かないと感じたので、レボフロキサシン(ニュー・キノロン系)500 mg/日とクラリスロマイシン(マクロライド系)600 mg/日の併用に切り替えました。しかし、期待したほどには効きません。2日半飲み続けたのですが、あまりに効かないため、上記の2剤に上乗せする形でサワシリン3g/日に増量・追加しました。

 するとようやく咽痛が軽くなり始めたので、これで有効な抗生剤を確保できたと考えて、プレドニン(ステロイド)を飲み始めました。そのおかげで痰が切れるようになり、咽の痛みも軽減しました。

 

 乾いた咳が続くのはマイコプラズマ(第2・3話)であることが多く、その場合にはレボフロキサシンがよく効きます。 一方、今回はレボフロキサシンが効かず、1日3gもの高用量のサワシリンでようやく効いたことから、A群溶血性レンサ球菌咽頭炎だろうと推察します。小児では咽頭痛だけでなく高熱などの典型的な症状が出ますが、成人の場合は様々なバリエーションがあり得ます。

 今年はA群溶血性レンサ球菌咽頭炎が、過去5年で最も流行した2015年に次いで報告数が多いようです(日経メディカル 11月号)。この病気の報告数は8月が最低で、冬季と春~初夏の2つにピークがあります。

 

 溶血性レンサ球菌は、昔は「溶血性連鎖球菌」と表記していましたが、今は「レンサ」が公式のようです。名前が長いので「溶連菌」と略称することも多いです。ペニシリン系が第1選択なのですが、今回の自分の経験でも分かったように、常用量の750~1000 mg/日では殆ど効かないと思います。その結果、より高価な第3世代セファロスポリン系であるフロモックス(一般名セフカペン・ピボキシル)などに処方が流れるのではないかと推察します。サワシリンは250mgが \13ですから、1日3g使っても\156で済みます。3割負担だと\46.8/日ですね。