診療(診察・治療)2017年11月15日
#56) コレステロールの下げ過ぎは よくない!

  「コレステロールは動脈硬化を悪化させる毒だから、どうにかして下げなくちゃ」と思っていませんか? 広く流布しているこの考え、実は、大きな間違いなんです。

  コレステロールは肝臓で作られているのです。人体が毒物をわざわざ作るでしょうか? 身体に必要な物質だからこそ常に作り続けているのです。コレステロールは、細胞膜、ステロイドホルモン(副腎皮質ホルモン、性ホルモン、ビタミンD)、胆汁、神経細胞の絶縁被覆素材、などを体内で作るための必須材料なのです。

  コレステロールを必要とする臓器に、肝臓からコレステロールを送り届ける運送役がLDLコレステロール(以下、LDLと略します)なのですが、なんと「悪玉コレステロール」という汚名を着せられています。

  健康診断のLDLの基準値は60~140 mg/dLとされています。つまり、140以上になると「高コレステロール血症」と診断され、「○○スタチン」という薬を処方されることになります。実は、このスタチンこそ、元来は毒物なのです。 スタチンは、古々米に生えるカビから抽出された物質であり、ヒトの肝臓でコレステロールが合成される過程を阻害します。スタチンは「家族性高コレステロール血症」という遺伝病に対する特効薬として注目されました。その後は、遺伝病以外の一般人においてもLDLが高いほど心筋梗塞などの動脈硬化性疾患が起こりやすくなるとされ、それを防ぐためにスタチンが多用されています。

 

  しかし、スタチンを飲んでLDLを下げても心筋梗塞などによる死亡率は下がらないことが2006年以降の研究で分かりました(宗田哲男・医師の著書『ケトン体が人類を救う』; 日本脂質栄養学会『長寿のためのコレステロール ガイドライン』)。同ガイドラインの副編集責任者・大櫛陽一・東海大医学部教授は、日本人の40~50歳以上や、より高齢者においてはコレステロールの高い方が癌死亡率や総死亡率が低いことを明らかにしました。つまり、コレステロールが低いほど総死亡率は上がります。

  私の経験から言っても、LDLが100以下の人は風邪をひきやすい等の印象があります。LDLの「基準値」では60以上を「正常」としていますが、80以下の人は「虚弱体質」というべき患者さんが多いと感じています。LDLが100以下に下がっているのにスタチンを漫然と処方され、病弱になっておられる場合をよく見かけます。

 

  更に重要なことに、スタチンは横紋筋融解症という副作用を起こし得ます。筋肉の細胞が壊れて、CK(クレアチンキナーゼ)やミオグロビンが血液中に漏れ出てきます。ミオグロビンは腎臓を傷めます。下げなくてもよいコレステロールを下げるために重篤な副作用を招くなんてヒドすぎる話ですね。思い当たる人は即刻、スタチンを止めましょう。