前回は「過剰な炎症」を抑えるステロイドの効用について述べました。反面、感染症を助長させる危険性を併せ持つことにも言及しました。これは一対の功罪と言えるでしょう。
その他、ステロイドの功罪を述べようとすると、このスペースではとても網羅することは出来ません。その理由は、ステロイドの作用が多岐にわたるからです。
例えば、ステロイドには強力な血糖上昇作用があります。糖質コルチコイドとも称されるゆえんです。ショック状態のときに血糖を上げる生理作用があり、これは「功」と言うべきです。一方、ステロイドには糖尿病を悪化させたり、誘発したりという「罪」があります。
ここでは抗炎症作用に限定してステロイドの功罪を述べます。アトピー性皮膚炎やリウマチ様関節炎や膠原病などの慢性炎症においては「過剰な炎症反応」が患者を苦しめます。こんなときにステロイドは救世主みたいな優れた薬です。前回、炎症とは「破壊と再生」のプロセスだと言いました。「組織の過剰な破壊と再生」が延々と続く慢性炎症にストップをかけるにはステロイドがいちばん、というかステロイドしかないというのが現状です。
しかし、炎症プロセスのうち「再生」を抑えてしまうということは害作用にも繋がります。皮膚は絶えず再生を繰り返している組織です。古くなった細胞は剥げ落ちていき、底の方から新たな細胞が置き換わってきます。皮膚炎を抑えるために、強力なステロイドを長期にわたって使い続けると、皮膚は薄く脆く(もろく)なってきます。ちょっと触っただけで剥がれて出血してしまうような脆弱(ぜいじゃく)な皮膚になってしまいます。これは皮膚細胞・組織の再生を抑えた結果です。
ステロイドの塗り薬にはランクがあります。作用が「最も強力」、「かなり強力」、「強力」、「中程度」、「弱い」の5段階です。炎症反応が強い場合には最強ランクを使いますが、症状の軽減に伴ってランクを下げていかないと皮膚の脆弱化という悲劇を招きます。
ステロイドで胃十二指腸潰瘍が起こるのも粘膜組織の再生を抑える結果です。骨粗鬆症が起こるのも骨組織の再生を抑える結果です。
このようにステロイドに功罪があるのは、「炎症」という、人体に備わった反応(生理的プロセス)が内包する本質的な功罪にそもそもの原因があるものと考えられます。
三雲クリニック
11/1 今日は新旧暦とも ついたち。お朔日詣り。コロナなんか怖くないが、ワクは怖い。打ったらあかん❕ コロ・ワクは毒チン❕❕