診療(診察・治療)2017年07月29日
#40) こんな患者さんに来てほしい(その1)

あと一ヶ月ほどで開業から満2年を迎えます。「やっと2年」でも「もう2年」でもない、確かな歩みの2年間だったと思います。おかげさまで大過なくやって来れました。

 

開業前には、「この地域の老年専科になるのかな」と予想していました。確かに、当初は高齢者が大半を占める印象でした。しかし、年が明けてインフルエンザの流行期から若い世代の患者さんが増え始め、やがて生活習慣病を抱えた中年層がぼちぼちと増えて現在に至っています。とはいえ、私の得意分野から言うと、以下のような患者さんにもっと来てもらいたいなあ、と願っているところです。

 

まず高血圧症。これは長年にわたって研究してきた分野であり、他の医師には無い独自の視点に立って治療をしています。血圧の値に一喜一憂するのではなく、10~20年先に元気で長生き出来ていることを目指した治療です。私の若かりし頃の研究業績は『日本心臓財団研究奨励一覧1986年(第12回)』などを見てもらえば分かると思います。

  高血圧症の標的臓器は脳・心・腎です。高血圧を放置すると脳卒中、心筋梗塞や心不全、腎不全になる危険性が高いのです。そうならないことを目指して血圧をコントロールする薬が理想的なのです。私のイチ押しはトランドラプリルというACE阻害薬です。血圧を下げる力は さほど強くありませんが、心不全にも心筋梗塞にも動脈硬化にも有効で、糖尿病による腎障害の進行を食い止めて透析に移行するのを遅らせる効果もあります。

  これ以外にも複数の薬を最適に組み合わせて、長期予後を改善する治療を行います。

 

糖尿病、これは私自身の経験に基づいて、更に『糖質制限』の原理原則(タンパク質と脂質はしっかり摂る)に則して、個々の患者さんに適した治療法を選んでいます。糖尿病の治療にあたっても血糖値やHbA1c値に一喜一憂せず、長い目で見て網膜症・神経症・腎症を抑制できるような治療法を目指しています。最近では「SGLT2阻害薬」といって血液中の余分なブドウ糖を尿中にどんどん排泄させる薬が画期的・革命的な治療効果をもたらしてくれることが判明しました。インスリンおよびインスリン分泌促進薬では血糖値と体重の両者を同時に管理することは至難の業でした。それがSGLT2阻害薬なら出来てしまうのです。

 

喘息、これも私自身の経験に基づいて、独自のくふうを凝らしています。基本は吸入ステロイドをうまく使いこなすことです。そうなんです、喘息とは「気管支粘膜の慢性炎症」なのです。だから、気管支粘膜にじかに届く吸入ステロイドが理にかなっているのです。私はメプチンエアなどのベータ2受容体作動薬(気管支拡張薬)は滅多に使いません。現在メプチンを多用している患者さんでも、ほとんど使わなくて済むように治療します。

                   ―つづく―