診療(診察・治療)2020年10月18日
#121) 今冬のインフルエンザの扱い 2020-2021

【写真左】満開のホトトギス。【写真右】クリニック玄関の前栽の岩を這うツタの紅葉

 

本稿末尾に「これは仮版。近日中に完成」と書いた。それから2か月以上が過ぎて第3波は益々拡散の勢いを増し、重症者・死者も増えつつある。欧米ではワクチン接種が始まった。国内では、期待されていたアビガンⓇ承認が見送りとなり、オルベスコⓇの有効性も証明されなかった。英国からは感染性の高まった変異型コロナウイルスの国内侵入もホットな話題になっている。そんな大混迷の中、小手先の改訂は断念して、原状のままで#121) とさせていただく。新型コロナの話題はあらためて別建てとする。(2020/12/26)

 

今シーズンは当院ではインフルを扱わないことに

  開業してからのこの5年間ずっとインフルエンザワクチン接種だけでなく、インフルエンザ(以下、インフル)の診断・治療を行ってきました。しかし、今年のシーズンには、当クリニックではインフルエンザなどの発熱患者さんを扱わないことにしました。インフルと新型コロナ感染症(以下、コロナ)との見分けが難しいから、というのが主な理由です。では、発熱した場合にはどうしたらいいのでしょうか?

  これまで国は、発熱などコロナの疑いのある場合は帰国者・接触者相談センターなどへ電話するように指導してきました。しかし、感染拡大の結果、センターの能力を上回ってしまっているのが現状です。

  そこで国は、「秋以降、発熱者は先ず かかりつけ医 や 地域の医療機関 に電話せよ」と方針転換したのです。ところが、地域のクリニックや診療所でただちに対応できるかと言えば、診療体制を整備できる医療機関はごく少数であると考えられます。

  当クリニックでも、発熱患者さんを一般の通院患者さんから分離する体制はとれません。診療時間帯をずらすというのも徹底は難しいです。時間帯を分けようとすることによって、ふだん診ている患者さんの状態悪化を招いたこともありました。

  それでは、発熱者はいったいどうすればよいのか?

  

今シーズンの発熱患者さんは生田病院へ

  結論を申しますと、発熱患者さんは生田病院(湖南市菩提寺にある、当クリニックの基幹病院です)の「発熱外来」に行ってもらいます。

  発熱や咳などの症状のある人は、まずは当クリニックへ電話してください。簡単に容体を聞いたうえで、「これはインフルか/コロナか? 見分けがつかない」と考えた場合は生田病院の「発熱外来」へ行ってもらいます。

  生田病院の「発熱外来」にて、必要に応じてインフル抗原検査とコロナ抗原検査を行い、「インフル陽性/コロナ陰性」と診断されればインフルの治療が行われます。「インフル陰性/コロナ陽性」または「インフル陽性/コロナ陽性」と出た場合には県指定の病院に転送・入院となります。

 

発熱する病気はインフルとコロナだけではない

  皆さんご存知のように、熱が出るのはインフルとコロナだけじゃないですよね。最初に私が電話にて問診させてもらい、明らかにインフルでもない、コロナでもない、と診断できるケースでは、当クリニックで診断・治療させていただくこともあります。

 

インフルとコロナは本当に見分けが付かないのか?

  厚労省が9/7日付けで公表した『新型コロナの診療の手引き 第3版』によれば、コロナとインフルは初期症状だけでは全く見分けが付かないと書いてあります。

  しかし、私見ではかなりの程度まで見極めることが出来ると思っています。9/30にウェブカンファランスインフルは、急峻な熱の立ち上がり、気道症状、全身倦怠感などを訴えて来院されることが多く、咽喉を見ると特有のリンパ濾胞を確認できる場合が少なくありません。よってインフル抗原検査を行うまでもなく臨床診断が可能です。もしもさほど症状が強くなければ、水分補給を忘れずに安静臥床するだけで治る病気です。

 

コロナ肺炎はサイトカイン・ストームではない、だって?

  最近、「COVID-19肺炎の重症化の原因はサイトカイン・ストームではない」とする意見・主張が現れ始めています。例えば、藤田医科大の西田修教授が日本腎臓学会の「コロナに関する特別シンポジウム」で講演した内容によると、重症化したコロナ肺炎の症例に於いて、1)インターロイキンIL-6などの血中濃度はさほど高くないこと、2)抗IL-6抗体単剤は重症化例であまり奏功しなかったこと、などが主張の根拠になっている。

  しかし、私はずいぶん早くから「免疫系の暴走」を指摘してきた。コロナ肺炎が重症化するか/しないか? への分岐点は、発症後5日目くらいに始まる「すりガラス様陰影」(病理的には間質性肺炎)が 起きるか/起きないか? の違いにあると考えてきた。この考えは今も変わらない。そして、この考えに立つからこそ、早期のステロイド使用が重症化への道を阻止する有力な手段であると考えている。

  たしかに、間質性肺炎を起こし始める段階のサイトカイン・レベルはさほど高くないだろう。その意味では、「ストーム(嵐)」という表現は当たらないように思う。しかし、「免疫系の暴走」のごく最初期の生体反応、つまり、軽症で治癒する患者なら起こらないであろう「免疫系の過剰反応」が間質性肺炎の起こり始めの原因になるものと信じている。

(お気づきのとおり、本文は未完成です。2,3日中に完成を目指します)