診療(診察・治療)2020年08月12日
#117) いま急増中のコロナウイルスは弱毒化した変異型

いま急増中の新型コロナウイルスは変異新型で弱毒性

  国立感染症研究所が8月5日に公表した『新型コロナウイルス SARS-CoV-2 のゲノム分子疫学調査 2』によると、6月以降に急増しているウイルス株は、3~4月に流行したウイルス株(ヨーロッパから持ち込まれたとされる)に比べて遺伝子が6か所変異した新株だそうです。

 

  私は緊急事態宣言が解除されたあとの第2波ともいうべき感染拡大の統計グラフを見ていて、次のような印象を持っていました。

1)感染拡大のグラフはウナギ登りであること、

2)新規感染者数の増加の割には入院者数の増加はさほどではなく、軽症例が多いらしいこと、

3)重症化して人工呼吸器やECMOに掛かる症例が さほど急増していないこと、

4)死亡者数の累計グラフも 殆ど危機感をつのらせないこと、等。

 

  これらの傾向から、【感染者数の急増】と【入院/死亡者数のほぼ沈静化】との間に乖離があるのでは?と考え、その理由を推察していました。そこへ、上記の8月5日付の発表があったのです。

 

  その発表を見て納得しました。私が推察していたのは次の2仮説です。

仮説1)現在拡大中のウイルスは、変異して弱毒化したものではなかろうか? だから感染者数は増加したものの、大部分は軽症であり、無症候か、あるいは、ごく軽症で済んでしまう。 

仮説2)ステロイドが有効な治療薬たりうることが分かって、厚労省もそれを承認したので、公的なお墨付きにより、大手を振ってステロイド(デキサメタゾン)を応用する医師/医療機関が増えて、全国的に標準化され、治療成績が上がった。もちろん、死亡者数は有意に減少した。

 

これらのうち、どちらか一方が正しいというよりも、両者が相まって良い傾向をもたらしているのではないか?と考えたい。

 

 

新型コロナを「二類感染症」指定から外してインフル並みに扱うべし

  私は以前から主張してきました。ステロイドの有効活用によって重症化を阻止し、死亡事例を減らすことができれば、新型コロナは過度に恐れる必要は無くなると。ステロイドのひとつデキサメタゾンが有効であると国が公認したことは、前回#116で述べたとおりです。

 

  そこへ加えて、今回あらたな有力情報が得られたのです。現在の急激な感染拡大は変異型の新型コロナウイルスによるものである。その結果として、感染力は上がったが、毒性は弱まった、と考えても間違いではなくなったのです。

 

  ウイルスの立場からすれば、死亡者数を増やすことなくウイルス自体の世界拡散を達成できれば、これ以上の性能は必要ない。つまり、新型コロナウイルスはヒトに気づかれずに体内に侵入し、ヒト細胞内でウイルスを拡大再生産して、宿主を傷つけることなく、咳や唾液などを介して他人に拡散するという世界戦略に見合った進化(変異)を遂げたことになります。

 

  こうした変異を踏まえて、新型コロナを「二類感染症」の指定から外すことが提言されている。現在の法律では、新型コロナに感染しただけで、たとえ無症状であっても軽症であっても隔離が義務付けられている。

 

  医療者側も「濃厚接触者」扱いでPCR検査を繰り返さねばならず、結果次第では2週間の休業措置の対象となる。現在のような過度な隔離措置のせいで医療資源の損失を招く。このような医療崩壊を招く法的制限を撤廃することが提言されている。「二類指定を解除し一般感染症として扱うか、または、五類に格下げでもよい」と、東京脳神経センター整形外科・脊椎外科部長の川口 浩医師が8月11日付の Medical Tribune誌上で発表している。全く同感です。

 

社会的距離、手洗い、マスク、換気、などで感染拡大を防ぐ意識は保つべきだが

  過度の恐怖心から感染者を犯罪者扱いしたり、差別することは全く不条理なことです。距離を保つ、換気を促す、手洗い、アルコール消毒、マスクなど、取りうる対策はとるべきです。しかし、ふつうのインフルと同様の扱い(二類から外すということ)になれば、差別も、犯罪者扱いも解消するでしょう。だって、ふつうのインフルなら誰も感染源を詮索したり、必要以上に遠ざけたり、差別したり、はしませんよね。

  ふつうのインフル並みとして扱うなら迅速抗原検査もインフル並みとなり、医療者側の防護具も省力化できます。余分の人材を割く必要も無くなります。

  来るべき今冬シーズンにはインフルと新型コロナの共存が懸念されています。インフルにはタミフルなどの治療薬が有るが、新型コロナには無いと恐れられています。しかし、デキサメタゾンが有効であることは国も認めている事実です。

 

  インフルと違って、ワクチンは未だ利用できませんが、現在流行中の新型コロナが冬の流行に繋がるならば、「感染するのは まあしょうがない」とあきらめて頂き、デキサメタゾン(内服・注射)や吸入ステロイドで重症化を防ぐことさえできれば、大騒ぎすることなく やり過ごせるような気がします。ウイルスも弱毒化して人類との共生を望んでいるようですから…