診療(診察・治療)2020年05月03日
#112) 緊急発信 新型コロナ肺炎には早期から吸入ステロイドを!

死者の増加を食い止めよ!

 2020/5/3現在、新型コロナ肺炎による死者は国内で518人となり、世界では約24万4千人を超えた。

 

 前号ブログで吸入ステロイド(ICS)が有効である可能性を強く訴えた。英国のジョンソン首相みずからが感染し ICU(集中治療室)に入るとかいう時期だったので、世界に向けても発信せねばと思い、全く不慣れな Twitter にて英語で発信した。しかし、殆ど反応の無いままに今まで経過してしまった。

 

 国内でも死者の増加が止まらない。指定病院に入院して、いまのところアビガン®(ファビピラビル)を治験薬として投与してくれる場合もあるようだが、まだ広く国内全般の病院にまで行き渡っているとは言えないようだ。

 

 せっかくの国内開発品(富士フイルム富山化学)であり、既に新型インフルエンザの薬としては承認されているわけだから、新型コロナ肺炎への適用拡大の承認を前倒しするか/否かは政府のやる気次第だと思う。しかし、首相自身が「法律の縛りがあるので、アビガンの承認を特例として早めることは出来ない」なんて妄言を吐いている。法律を作る、改訂するのが自分ら国会議員の仕事である、という己の責務を全く分かっていない、すっとぼけた発言を聞いてひっくり返りそうになる。

 

 

先ずは承認薬である吸入ステロイドの使用を、早く! 

 前回も書いたが、オルベスコ®(シクレソニド)以外の吸入ステロイドもオルベスコ®同様に、あるいは、それ以上に、必ずや肺炎の重症化を食い止めることができるはずである。新型コロナ肺炎の発症早期の間質性肺炎のタイミングを見逃さずに投与開始するならば。

 

 オルベスコ®(帝人ファーマ)は供給量が少ないために誰でも使える状態にはない。それならさっさと他の吸入ステロイドを使えばいいと思うのだが、シクレソニドが持つとされる「抗ウイルス作用」を他のステロイド剤は持たないという誤解を世間は信じて疑わないようだ。

 

 呼吸器専門医でさえもが「ステロイドは感染症を助長する恐れがあるから」との理由で吸入ステロイドの使用を躊躇する。万一、新型コロナ肺炎が進んで細菌性肺炎やマイコプラズマなどの非定型肺炎を併発したとすれば、その時は抗生物質や抗菌剤を使えばいいだけの話である。

 

 

先ずは当面の敵を知るべし!

 新型コロナ肺炎の発症早期に戦うべき相手はウイルスそのものではない。ウイルスとはひとまず休戦協定を結んで、【自己の免疫系の過剰反応による肺組織の炎症・破壊】これをこそ抑えるべきである。それが救命に繋がる。

 

 その目的のために、既存の、有効性・安全性の確立されている、吸入ステロイドを使うのが目下実行可能な唯一の治療戦略だと思う。

 

 もしも皆さん自身、または身近の方が感染し息苦しさを訴えられたなら、決して遅れることなく主治医に吸入ステロイドを処方してもらってください。国内にはオルベスコ以外に次の5種類があります。

     フルタイド(GSK);     パルミコート(アストラゼネカ)

     キュバール(大日本住友);   アズマネックス(MSD)

     アニュイティ(GSK)

 

 

吸入ステロイドが入手困難な場合は...

 もしも吸入ステロイド剤(ICS)が入手困難であれば、同じく喘息治療用の【吸入ステロイド ICS + 長時間作用型β2受容体刺激薬 LABA】合剤も使えるはずです。 LABAにも抗炎症作用がありますので。ICS単剤と同様に、あるいは、それ以上に有効なはずです。国内で利用可能な【ICS+LABA】合剤は次の4種類です。

     アドエア(GSK);      シムビコート(アストラゼネカ)

     フルティフォーム(杏林);   レルベア(GSK)

 

禁忌事項は乗り越えて

  ICS単剤にせよ、ICS+LABA合剤にせよ、それらの添付文書には次のような禁忌事項が書いてある。《有効な抗菌剤の存在しない感染症には用いないこと》と。

 しかし、これを字義通りに解釈するならば、新型コロナ肺炎には目下のところ使えないことになる。一方、過剰炎症反応を抑えるにはステロイドしかない。

 ところが、不思議なことに、全身投与できる、普通のステロイド剤の添付文書にはこんな禁忌条項が無い。これは理不尽なことである。全身に分布するステロイド剤には無い規制が、なんで吸入ステロイドには課せられているのだろう???  吸入ステロイドは吸入して到達した局所、つまり気管支や肺胞などにしか薬は分布しない。全身には移行しないのが特徴である。

 

 つまり、禁忌条項に縛られていては、眼前の患者を救えないのだ。杓子定規に禁忌条項を順守するのではなく、科学的合理性のある思考と救済の強い意思を以て医師の裁量権を発揮すべきときだろう。

 

ステロイドの使用で以て新型コロナ肺炎の悪化・重症化を防ぐことができれば、この感染症をさほど恐れる必要はなくなる。やがてはウイルスと人類の共存・共生を得てパンデミックは鎮静するのではなかろうか。