前回のブログ更新(仮)から1か月が経ってしまいました。この間、ずっと仮版を完成版にしようと考えてきました。しかし、新型コロナ肺炎の世界的蔓延と、イタリアやスペインなどでの死亡例の爆発的な累積など、状況は日に日に激しく変動し、情報収集さえ間に合わないくらいでした。ブログ更新の機会をずっと失ってきたのです。
で、仮版を改訂することはあきらめ、仮版は仮版としてそのまま残すことに決めました。なぜなら、2020年2月27日時点での私の考えを述べた記録的価値のあるものと考えるからです。つまり、仮原稿のまま、ブログ#110 の番号を与えておこうと思います。
それではまず、今号(#111)以降における用語について定義しておきます: 新型コロナウイルス(正式名称は SARS-CoV2)が感染して起きる病気を COVID-19(英語圏のTVニュースを視聴すると、コビッドではなく "コゥビド ナインティーン"と発音しているようです)と呼びます。日本語では「新型コロナ肺炎」と呼んでいますが、肺炎に到らない軽症例も多いので、感染症の名称は COVID-19 と呼ぶべきだと思います。
この1か月、中国の死亡者数を上回るイタリアの死亡者数の激増という悲劇を視るにつけ、何とかならんものかという思いが日増しに強くなっていました。有効な治療薬は何も無いとされる世界の趨勢の中にあって、日本から発せられた有望な情報があるのです。
それは、神奈川県立足柄上病院の岩淵敬介医師らが日本語で発表された症例報告『COVID-19肺炎初期~中期にシクレソニド吸入を使用し改善した3例』です。喘息治療用の吸入ステロイド剤、オルベスコ®(一般名:シクレソニド)を COVID-19肺炎患者3例に用いたところ著効を示したのです。とりわけ、3人のうちの1人は治癒して退院されたというのです。この報告が2020.3.2 に日本感染症学会のHPに公開されました。しかし、日本語のみの発表だからか、世界では、とくにイタリアでは、ほとんど知られていないのではないでしょうか?
上記の症例報告が出たとき私は小躍りして喜びました。なぜなら、ブログ #110 で「ステロイドを、適時に、適量で使えば COVID肺炎の重症化を食い止めることができるはずだ」と書いていたからです。しかし、そう書いたときには、吸入ステロイドという限定をせずに全身投与を想定していたのです。
全身投与したステロイドは身体中の免疫系を抑えるので感染症を長引かせたり、ときには重症化させたりすることもあるのです。その点、吸入ステロイドは気管支や肺胞に届いて局所で作用するのが主体であり、血液を介して全身に移行することは少ない、という特性を持っています。肺炎に効かせればよいわけだから、吸入ステロイドのメリットを活用する、というグッド・アイデアですね。
私は、シクレソニドの主な作用は、ステロイドとして気管支などの過剰な炎症を抑えることにあると考えます。だからこそ、他の吸入ステロイドにも同様の効果を期待できると考えるのです。
ところが、「シクレソニドには SARS-CoV2 の増殖を直接抑える作用がある」と主張する論文が発表されました (Matsuyamaら、The inhaled corticosteroid ciclesonide blocks coronavirus RNA replication by targeting viral NSP15. bioRxiv preprint, 2020.03.11)。この研究は試験管内の実験ですが、ウイルス増殖を抑えるために、臨床では有り得ないような高濃度が必要というデータが示されています。永年、薬理学研究に従事してきた私には、当該論文の結論に無理があると思えます。
実際のCOVID肺炎患者さんに於いて著明な効果を示したのはシクレソニド(オルベスコ®)のステロイド作用であって、決して抗ウイルス作用ではない、というのが私の見方です。世間は早とちりして、オルベスコ®の製造元、帝人ファーマの株価が暴騰したそうです。しかも、オルベスコ®を買い占める動きさえ発生したので、ふだん利用している喘息患者さんに迷惑が掛かるという理由で製造元は特別の配慮(出荷制限?)をしているようです。
繰り返しますが、COVID肺炎の初期(咳が1週間続いたら、その時期を逃さず)に吸入ステロイドを使えば、必ずや肺炎の重症化を防げるはずです。なぜなら、その時の肺は間質性肺炎の病像を呈しているからです。この病像は、大部分のCOVID肺炎患者で、ほぼ例外なく証明されています。
昨夜、眠いのをこらえて、『Dr.岡のプラチナレクチャー COVID-19特集』というweb講演を視聴しました。現時点での臨床的な最先端(Cutting Edge)というべき講演だと思います。自分の知らない知識も満載でしたし、また、私の考え(COVIDの病態の解釈、および、その解釈にもとづく治療薬の提案)を支持してもらった感がありました。つまり、私の考えが独りよがりではなく、まっとうなものであるらしい、と意を強くしたのです。
岡先生はシクレソニドの使用を、治療手段の一つとして挙げておられました。しかし、出荷制限されている薬ですから、世界に広く呼び掛けるには無理があります。私は、すべての吸入ステロイド剤が効くに違いないと信じています。使う時期が遅きに失しないように、間質性肺炎の発症初期に適量の吸入ステロイドを使うこと、それを世界に向けてアピールしていきたいと思います。
国内では今、COVID肺炎患者に対するシクレソニド(オルベスコ®)の臨床治験が進行中とのことです。早く結果が出るといいですね。感染しても8割の人は軽症または無症状です。残り14%ほどの感染者が肺炎を起こすとされています。肺炎が悪化して死に至るのは全体の3%ほどだと言います。世界中で吸入ステロイドが活用され、COVIDが死ななくて済む病気になった暁には、ふつうの季節性インフルエンザと同じような扱われ方になり、パニックから解放されるのではないでしょうか。 その日を待ち望みます...
三雲クリニック
12/7(土) 大雪(黄経255°)次は冬至です。日本人の免疫力落ちてます。打ったらあかん‼ コロ・ワクは毒チンやでぇ❕