症例2023年01月19日
事故で抜けた歯の処置後14年間ー6

6.まとめ

 

今回私は、事故後1時間10分後に来院、その時点で歯根膜線維は汚染・乾燥で壊死していた為、除去後、歯を再植し14年間支障なく生存させる事に成功しました。(その後、患者は転勤の為、来院せず)

そして、7ミリ挺出した歯と舌側に4ミリ入った歯の予後は全く問題ありませんでした。

もちろん痛みも動揺もなく、このことから抜けた歯の保存状態が良ければ予後が安定していたと思われます。

 

抜けた歯の予後として

抜けた歯を元の位置に戻す(再植)までの時間が30分以内であれば90%、30~90分では43%、90分以上では7%が成功すると言われています。

 

大事な事は

今回の症例では歯根膜(歯根の歯周組織)が壊死していた為、歯根と骨が骨性癒着を起しました。

その結果、歯根の吸収が起こり拡大され、最終的には再び脱落すると思われます。

このことから、再植を成功させるには以下のポイントが大変重要になります。

 

①再植の成功には歯根膜(歯根の周囲組織)の保存状態で左右されます。

コップに歯の保存液(24時間有効)がベストだが、代替手段として牛乳・生理食塩水(コンタクトレンズ洗浄液でもOK)の中に入れる、なければ口の中(唾液中)に入れる事が大事です。

水道水には入れないほうが良いが、上記のモノがない場合は最後の手段としては可。(乾燥させてしまうよりは良い)

 

②保存の際は、歯の歯冠(頭の方)を持って歯根は触らず、汚れを落とした後、ブラシ等で歯根膜線維を傷つけない事がポイントです。

 

③口腔外科、もしくは電話で近くの歯科医院で処置できるか確認し、出来る限り早く処置をする事が重要です。