義歯治療2022年06月28日
総義歯治療

主訴

今の入れ歯でも何でも噛めるが、くしゃみをしても飛び出すし、噛み合わせツルツルになってしまった為に新しく作って欲しいとのこと。只、前に他院で作った時も顎舌骨筋下部に、床が伸びているのが痛くて削除してもらった。22年前に病院の歯科にて作製、何度も調整に通ったが改善されず、そのうちに慣れて現在に至る。

 

顔貌所見

あきらかに咬合高径の低下と上口唇の内転感と前方位の咬合が考えられる。

 

口腔内所見

上下の総義歯の安定がない為の、上下顎の歯槽堤の吸収が著しい、上顎前歯部にフラビーガムが認められる。

 

 

治療方針及び内容

まず、今の旧義歯を改善するよりも新義歯の必要性を優先し、トリートメント・デンチャーを作製し、顎位の安定。咬合高径を20mm高くし、ティッシュ・コンディショニングを行いながら、機能的、審美的に改善を図る。

顎位を安定させる目的で、下顎臼歯の咬合面をフラットにし、顎位を規制しない状態にし、タッピィング時のばらつきがなくなり、義歯が安定し咀嚼できる状態が確認された時点で最終義歯を作成する。

 

総義歯治療における3大ポイント

1.咬合平面の設定

上唇下縁の高さを基準に前歯部咬合平面の高さを決める。臼歯部の咬合平面は、前歯部咬合平面の高さを基準に、最終的には後臼歯三角の高さの1/2~2/3あたりを通過し水平的には左右同高であることが望ましい。

 

年齢・性別による上唇下縁と中切歯切縁の高さ的関係

 A.若い女性、安静時、上唇下縁より下方3mm

 B.若い男性、安静時、上唇下縁より下方2mm

 C.中年、安静時、上唇下縁より1.5mm

 D.高齢者、安静時、上唇下縁と同じ高さか上方2mm

 

まとめ

無歯顎や高度に崩壊した歯列を正常に、しかも自然に美しく回復するためには機能と構造に関しての知識と技術が必要不可欠であり、かつ、きわめて洗練された”美意識”が要求される。この患者が「人前で大声で話せるようになった」、「年に1回の同級生との食事会で全部の料理が食べられるようになった」などといったことは義歯装着により患者の心理状態が改善された証である。