診療(診察・治療)2018年03月08日
#72) 世界腎臓デー

 きょう3月第2木曜日は世界腎臓デーだそうです。気付かれにくい腎臓病に関して啓発を行うのが目的だとか。

 腎臓の機能は年齢とともに衰えていきます。特別に病気が無くても機能低下は進んでいきます。ところが、高血圧や糖尿病や動脈硬化などいわゆる生活習慣病があれば腎臓の機能低下は更に加速されます。糖尿病が原因で血液透析(人工腎臓)に掛からねばならない患者さんが毎年1万人ずつ増えている、などと聞かれたこともあるでしょう。

 糖尿病の三大合併症とは、網膜症・神経症・腎症です。これらの合併症を招かないようにすることが糖尿病治療の最重要課題なのです。決して「血糖値やヘモグロビンA1cを○○以下に抑えること」が目的ではありません。

 

 糖尿病以外に、高血圧と腎臓病の関係は切っても切れない関係として昔から知られています。高血圧は腎臓病を悪化させるし、腎臓病は高血圧を助長します。単に血圧を下げるだけではなく、腎臓を護る効果を発揮するのがACE阻害剤やARBなのです。

 糖尿病性腎症に対してARBのひとつテルミサルタンが有効であることをAGE牧田クリニックの牧田善二医師(元・久留米大学医学部教授)が実証しています。具体的に言うと、血液アルブミンというタンパク質が尿の中に漏れ出るのをテルミサルタンが防いだ、という事実です。

 同様の効果があるか否か? 私はACE阻害剤トランドラプリルを用いて調べてみました。これまで二十人ほどの患者さんで追跡調査してきましたが、ひとりの例外も無くアルブミンの漏出が抑えられました。つまり、腎臓保護効果があるのです。

 

 一方、【高血圧症に対して処方されることが最多のアムロジピンなどカルシウム拮抗薬】には腎臓保護作用はありません。「血圧を○○以下にコントロールする作用」は強いですが、腎臓を護る効果は無いのです。ここが重要な落とし穴です。 ACE阻害剤やARBが光って見えます。単なる高血圧症の薬には留まりません!