診療(診察・治療)2017年08月22日
#44) 血管年齢が測定できるようになりました

このほど、いわゆる「血管年齢」測定装置を導入しました。VaSera VS-2000という機種で、動脈硬化の程度を客観的な数値として表すことができます。各年代の多数の被検者のデータが蓄積されているので、それと比較することによって「あなたの血管の硬さは60代後半に相当します」のように評価されるのです。

 

 四肢に血圧測定用のカフを巻き、心音を検出するマイクを胸に貼り付けるだけですので、痛みなどの苦痛を伴いません。ただ横になって安静にしているだけでいいのです。

 

 動脈硬化は誰でも加齢とともに進行する「血管の変性」ですが、高血圧・糖尿病・喫煙などで進行が加速されます。かつては高脂血症により動脈硬化が加速される、と言われていました。しかし、研究の進歩によって「動脈硬化は慢性炎症である」と解釈されるようになっています。少なくとも日本人に関しては、血中のコレステロールや中性脂肪を下げても動脈硬化が改善されるという証拠は乏しいのです。また、血圧や血糖をコントロールすれば動脈硬化が予防できるかといえば、それほど単純ではありません。

 

 ACE阻害剤(ACEi)やアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)は、高血圧の治療だけでなく心不全や動脈硬化の治療にも有用であることが分かっています。普通はこれら2剤のうち1剤だけを処方されるケースが多いと思います。

 

 動脈硬化を増悪させる因子のひとつにアンジオテンシンⅡ(AⅡ)があります。人体内でAⅡを作る経路にはACEとキマーゼという2種類の酵素が関わっています。ACEiはキマーゼには無効ですので、AⅡの悪い作用を抑えるにはACEiとARBを併用する必要があります。これが、1993年に私らが世界に向けて提唱した「キマーゼ仮説」「キマーゼ理論」です。

 

 最強のACEiであるトランドラプリルと、最適なARB(テルミサルタンまたはイルベサルタン)を併用することによって、動脈硬化の進行を食い止め、あわよくば回復させることを狙って治療を行うのが当クリニックの基本原理です。これを「表看板」にしたいと思っています。

 つまり、単に測定のための測定ではなく、治療効果を判定するための客観的な数値を出してくれる装置を このほど導入できた、という点が画期的なのです。