診療(診察・治療)2017年10月05日
#51) 風邪の流行 ⇒ 喘息の悪化

 大陸から高気圧が張り出してきて、肌寒いけれど名月を楽しめた十五夜(旧暦八月十五日の月)でした。夜更けにはずいぶん冷えて来ました。10/4~10/5午前2時までのアメダス記録によると、信楽の最低気温が9.0℃@24:00、大津が12.5℃@23:43、彦根が12:2℃@24:00、米原が7.6℃@01:21 などとなっています。

 寒いはずです。次に来る二十四節気は10/8の「寒露」(太陽黄経195°)、そして10/23の「霜降」(太陽黄経210°)ですからね。今年は9月に入って直ぐに寒い日々がありました。いつも言ってますが、「低温と乾燥」は風邪をもたらすウイルスや細菌が、また、インフルエンザ・ウイルスが増勢する好条件です。実際、東京では(県内でも大津では)インフル流行による学級閉鎖があったようです。

 

 寒くなるに連れて当クリニックでも「のど痛」や咳・痰や鼻水を訴える患者さんが増えてきました。幸い、インフルは未だ発生していませんが、何十人もの患者さんの咽(のど)を診ていますと、私にも幾ばくかの感染源をお裾分け頂くようで、このところ喘息のコントロールが不調です。

 

 ふだんから喘息を統御するために吸入ステロイドを用いているのですが、吸入した薬の大半は口の中に付着します(目的とする気管支・細気管支まで届くのはごくわずか)。もちろん、直ぐにうがいをして口内の薬を洗い流すよう気をつけてはいます。それでもステロイドが咽頭のリンパ組織に作用して、その免疫機能を抑えてしまうことは避けきれません。

 つまり、咽頭リンパ組織という「水際防御隊」の力を抑えてしまうので、風邪などにかかりやすくなるリスクを抱えているわけです。病原体が細菌やマイコプラズマならば抗生物質を活用すべきです。しかし、ウイルス全般に効く薬はいまのところ存在しませんので、マスクなど予防しかありません。

 

 「喘息は気管支粘膜の慢性炎症である」ことが判っています。昔は「気管支の一時的な痙攣(攣縮)」と考えられていましたので、「気管支拡張剤を使えば後腐れ無く治る」と誤解されていました。確かに、気管支拡張剤は発作のときの呼吸困難を緩めてくれますが、「慢性的に進行する過剰な炎症反応」を抑えることはできません。だからこそ、吸入ステロイド(全身への影響は ほぼ無視できます)で ― 発作が起こらないように ― 普段から統御しておく必要があるのです。