診療(診察・治療)2021年03月17日
#123) ようやく、今年初めての更新 もう春彼岸

  2021/5/17 最初の起筆から2か月も経ってしまいました。コロナ事情は著しく変化しているので、これ以上の改訂はせず、未完の形ではありますが、#123) として公開します。コロナ問題については次のブログ更新に備えています。

  これまでの改訂作業過程:4月13日に少しだけ追記しました(法規制について)。

 

要点:1)新型コロナワクチンについて

   2)再び吸入ステロイドの勧め

   3)感染規制法の難点

   4)ウイルス遺伝子の切断技術による抗ウイルス薬の開発

 

1)新型コロナワクチンについて

   世界的なワクチン接種の実施実績からは大きく遅れて国内での接種が始まった。まだ滋賀県では実施スケジュールの声を聞かないが…。接種後進国になって良かった点もあると思う。それは、先行地域での有効性および安全性に関する集積情報を利用できる点である。いまのところファイザー社のmRNAワクチンが最も広く実施されている。人類史上はじめてのmRNAワクチンということで安全性への懸念・不安も強かったが、いちおう外国ではアナフィラキシーもさほど発生しておらず、しかもアナフィラキシーが起こったとしても命を落とした例が無いことは安心材料ではある。

 ただし、日本国内では今のところ実施例数は少ない割にはアナフィラキシーの発生率が諸外国に比べて高いような印象がある。幸い落命した例はないが、過去にアナフィラキシーを経験した人は避けるのが無難と思われる。

 mRNA(メッセンジャーRNA)自体は自然環境においても壊れ易く(だからディープフリーザー凍結保管が必須なのだが…)、人体内でも直ぐに壊されてしまう。またmRNAが核膜を超えて細胞核まで侵入することはないとされている。ゆえにmRNA自体はアナフィラキシーを起こす誘因にはならないようである。

 ただし、mRNAを注射部位からヒト細胞内に届けるために、mRNAをPEG(ポリエチレングリコール)という高分子の脂質の膜で包み込んである(リポソーム)。どうやらこのPEGがアナフィラキシーを起こすようだ。mRNAは製造しやすい、遺伝子変異にも迅速に対応(改造)できる、といった利点があるハイテク部分なのだが、PEGはかなり以前から使われており、その薄い膜でmRNAを封入する(包み込む)という技術も以前から在る、言わばローテクなのです。このPEGという高分子がアレルギーを起こしやすいということは既知情報であり、より安全な代替品の開発が望まれるところだ。

 

一方、アストラゼネカ社のワクチンはアデノウイルス・ベクターという乗り物に乗せてワクチンを細胞内に届ける。どうやらこのベクターが血栓形成など悪さをするらしい。欧州やオーストラリア、ニュージーランドでは緊急使用停止の措置がとられている。

 

2)再び吸入ステロイドの勧め(懲りもせず...)

入院の必要な感染者にはデキサメタゾンまたはプレドニゾロンなどのステロイド投与が当たり前になっているようです。しかし、【吸入ステロイドが重症化阻止に有効だ】という証拠はありません。オルベスコ®(シクレソニド)の治験が不成功に終わったからです。

 ホテルや自宅で待機中の感染者が急変して死亡するケースもしばしば報道されています。何が急変させる要因なのか?未だに分かりませんが、【免疫系の暴走】とか【血管内皮障害による血栓形成」などが示唆されています。重症化に至った場合にデキサメタゾンが有効であること、は確立された事実なので、免疫暴走が主要な原因メカニズムであろうと考えます。

 免疫暴走が主犯であろうことを示唆する事実があります。血液病のため白血球が少ない(免疫細胞が少ない)ある女性は、新型コロナに罹ったものの重症化には至らず、ウイルス排出が60日間に及んだけれども治癒した、という報告があります。つまり、過剰な免疫反応が起こらなければ、ウイルスと宿主は平和に共存することができる、ということを示しています。

 免疫暴走が重症化の主因であるならば、発症初期に吸入ステロイドを用いるのは妥当であると思うのです。強力かつ持続的な炎症抑制作用を持つ吸入ステロイド剤(例えばレルベア200エリプタ®)を発症第4日~約2週間にわたって毎日1回吸入すれば重症化は防げて治癒するだろうと考えます。 ただし、この治療法の有効性を確かめる機会を私は有しません。自身が感染したら真っ先に実験するのですが、幸か不幸か、未だ感染に至りません。

 有効であるか否かの証明には精度の高い治験(臨床試験)が必要なのですが、そのような機運はありません。もしも感染したら、「喘息」と診断してもらいレルベアを処方してもらうより仕方がないと思います。国が認めた新型コロナ治療薬・治療法であれば全て公費でまかなわれますが、非承認であれば普通の喘息の治療として扱ってもらうしかありません。レルベア200エリプタの14回吸入剤は1キットの公定薬価が \2831(薬価サーチ)ですから、それの3割とか2割とかを自己負担してもらわねばなりません。しかし、これで生命の危機を乗り越えられるなら、むしろ安いくらいではないでしょうか。

 なお、私自身は普段から喘息治療のためにレルベア100を毎日吸入しているので、たとえ感染してもレルベア200に切り替えるだけで済みます。重症化に至る併存疾患として糖尿病、肥満、高血圧、心臓病などが挙げられていますが、喘息は意外なほど順位が低いのです。何故そうなのか?は分かっていませんが、喘息患者の殆どが吸入ステロイドを常用していること、が重要なカギを握っているように思えてなりません。

 

3)感染規制法の難点

以前から主張してきたように、新型コロナの第2類指定を外して、インフルエンザなどと同等の5類扱いにすべきである。2類指定こそは医療崩壊や患者差別など諸悪の根源になっている。2類指定感染症だからこそ《罹患者の差別や犯罪者扱い》《診療所や病院の閉鎖、スタッフの休業命令》《コロナ診療への不参加・忌避》などの深刻な問題を引き起こしている。

 最新刊『コロナ自粛の大罪』(宝島社 2021/3/19) の第3章で、物言う「町医者」として有名な長尾和弘医師がハッキリと書いておられる。「5類感染症に指定すればコロナ騒動は終わる」と。私も全く同感です。

 《検査や入院を拒否したら罰金(科料)》なんて悪法は、かの「禁酒法」の失敗から何も学んでいないバカ丸出しだと思います。却って深く広く潜航してしまうことを促すだけでしょう。

 

4)ウイルス遺伝子の切断技術による抗ウイルス薬の開発

2020年のノーベル化学賞を受賞したゲノム(遺伝子)編集の原理「CRISPR-Cas9(クリスパー・キャスナイン)」は、細菌(バクテリア)がウイルスの侵入に対して自らを防衛する ―つまり細菌の免疫システム― を応用した遺伝子編集技術です。新型コロナウイルスが大流行するようになって1年以上が過ぎ、細菌の世界では、新型コロナウイルスの遺伝子を切断してウイルス感染を食い止める変異細菌株が既に出現しているに違いない。

 ノーベル賞受賞者のひとり、ジェニファー・ダウドナ教授(カリフォルニア大学バークリー校)はCRISPR-Cas9技術を用いて新型コロナウイルスを潰す新薬を既に開発したという。まあ、発見者ならば当然の発想・着眼ですよね。但し、この抗ウイルス薬をヒトの治療に応用するためには基礎研究・臨床研究の壁を何重にも越えねばならず、現在は競合他者〈他社)としのぎを削っている最中らしい。【ナショナル・ジオグラフィック 2020.     】

 でも、これまでの抗ウイルス薬の発想とは根本的に異なる手法 ―細菌が数十億年かけたウイルスとの闘いの歴史から獲得してきた免疫手法なのだから― 確実な効果が期待できるでしょう。あとは、新型コロナに特化したCRISPR-Casシステムのヒト身体への投与法、および、安全性の確保など現実的・臨床的な課題をクリアするだけだと思います。早く実用化されることを祈ります。それであってこそノーベル賞にふさわしい科学・技術です。